25年前に自分を捨てた父との衝撃的な出会いと奇跡

「父に捨てられた」
悲しい気持ちで小さな胸を押しつぶされそうになったのは、ダイアナ キム(Diana Kim)さんが5歳の時のことでした。
写真スタジオを営んでいたお父さんはダイアナさんが5歳の時に母と離婚し、家から出ていってしまいました。それからは消息が絶たれ、父親とは一切音信不通の状態。
祖母からのちに、「父は重度の精神疾患にみまわれ、苦しみ、家族のもとから姿を消したのだ」とダイアナさんは聞かされました。

父母が離婚してからの人生は、地を這うようなドン底の日々が続きます。手をひかれ、最初に預けられたのは友人の家。住む所もありませんから、親戚や友人の家に寝泊まりさせてもらったり、どこにも泊まれないときは公園で寝たり、車の中で生活する事もありました。

両親の離婚によって底辺の暮らしを味わってきたこと、そして過酷な生活環境の中で悩み、苦労して育ってきたダイアナは、ホームレスの人々の想いが痛いほどわかります。

実は、ハワイのホームレス人口は現在では一万人を超えたともいわれています。もともとハワイ在住の人だけでなく、気候が良いためアメリカ本土からホームレスになるためにハワイに来る人もいるほど。

彼らが抱えているのは経済的な問題だけではありません。陥ってしまった境遇への心の葛藤なども深刻です。そんなホームレスの立場が分かるのはダイアナだからこそ。

ホームレスの人たちを少しでも助けたい。
彼女の熱い想いが行動へとつながったのは2003年。彼女が大学1年生の時でした。ホームレスの人たちを被写体にした写真プロジェクトをスタートさせます。

かつてカメラマンだった父親の影響でしょうか。ダイアナさんも撮影に夢中になりました。

彼女がはじめたプロジェクト名は「The Homeless Paradise」。ホームレスの人々に焦点を当て、彼らの姿や生活を写真で赤裸々に語り、広く知らしめ、義援金を募り、ホームレスを保護できるようにすることが目的です。

プロジェクトをはじめて10年がたったある日の事でした。
交差点の角にたたずむ一人のやせこけたホームレスにカメラを向けたときに、ダイアナに衝撃が走ります。「あれは・・・」、そう、25年前に生き別れた父の姿だったのです。

おそるおそる近づくと、彼は誰もいない傍らに向かって、居るはずのない誰かと口論をしていました。
声をかけますが、まったく気づく気配がありません。

「娘であることを気づいてほしい。」そう思って父親の前に立った時、ホームレスの女性が来て「彼はいつもそこに立ってるのよ、邪魔するんじゃないよ」といわれます。ダイアナさんは彼女に対して「I have to try(やらなきゃいけないのよ」と言い返しました。彼は自分の父親なのだと世界中の人々に叫びたい気持ちでいっぱいでした。

幼い頃、大好きだったキャンディーを買ってくれたお父さん。まさか、父親と再会するなんて!
しかし、25年を経て巡り合えた父親は、あばら骨が浮き上がり、顔も体も痩せこけ、重度の統合失調症を患っていたのです。

ダイアナさんは、父親を人間らしい生活へ導こうと、1年半にわたりずっと彼に寄り添い、多くの時間を共に過ごしました。しかし、父親は彼女の申し出を受け入れず、薬も治療もすべてを拒否。

このままでは父は死んでしまう。
そんなある日、1本の電話がダイアナのもとへ入りました。父親が心臓発作で倒れたことを、ホームレス仲間がダイアナに知らせ、助けを求めてくれたのです。
すぐに父親を病院へ運び、治療を受けさせた事がきっかけとなり、父親は気力体力共に回復。更生プログラムによって仕事を得られるようにまでなりました。

大きな苦労を背負って生きてきた人生。ホームレスの人たちに寄り添い、役に立ちたいと行動してきた事、「人生そのものが贈り物なのです」
「私たちが今持っている全ての物に対して感謝の気持ちでいっぱいです。」
そう語るダイアナさんの姿は明るい光に満ち満ちていました。

参考資料
http://spotlight-media.jp/article/180283081876115750