どんな仕事もクリエイティブ!~あるレジ打ちスタッフの気づき~

自分がやりたかったことと違う!

そう言って仕事を変えてしまう人はいるかもしれません。
そもそも、自分のやりたいことが社会にそのまま用意されている…ということは幻想ではないでしょうか?

現在たくさんの方が従事している「レジスタッフ」ですが、その仕事を単純作業と捉えるか、たくさんの創造がある仕事と考えるか…これはある女性のお話しです。

彼女は思い返せば何をやっても続けることが苦手でした。
上京して大学に入っても、何かが違う…と嫌になってサークルを転々とするようなところがあったのです。

いよいよ就職の時期になり、彼女なりに吟味してメーカー系企業に勤めることとなりましたが、3カ月で上司と衝突して退職。
「つまらない」「私がやることではない」「私がやりたかったことではない」とその後も就職先を転々とすることとなります。
当然、彼女の職務経歴書は短期での就職と離職がたくさん記載されることとなり、正社員での採用が思うように決まらなくなっていくのでした。

けれども、生活のためにも働かなくてはいけないと感じた彼女は、派遣の登録をすることにしたのですが…
派遣先の社員の人たちとトラブルを次々と起こし辞めることになる…派遣社員としても十分に勤めることができなかったのです。

会社から次に紹介されたのはスーパーの「レジ打ちスタッフ」でした。
この当時は、現在のように商品をかざせば代金が入力されるシステムはまだなく、ひとつずつ手打ちしなくてはなりません。
技能としてはタイピングの技術も必要です。

勤め始めて1週間もしないうちに、彼女は「こんな単純作業がやりたいわけじゃない!」と思い始めていました。
ちょうど、娘の気持ちがわかっているかのように母親から連絡があり、「無理をしないで帰っておいで」と言ってくれたのです。

せっかく上京したのだから…と思っていたけれど、ここまでうまくいかない状況が続くと、さすがに彼女も母親の優しさに頼ろうという気持ちになりました。
そして辞表を書き、部屋の整理を始めると、一冊のノートを見つけたのです。それは彼女の小さい頃の日記でした。日記にはしっかりと「将来はピアニストになりたい」と書かれていました。

思い返せば…自分が唯一続けられたもの、それはピアノの練習だけだった…それでも結局やめてしまって、あの頃から何も変わってなくて、嫌だから逃げ出そうとし続けているんだ…
そして彼女は泣きながら母親に「もう少しがんばる」と告げたのでした。

「後少しだけ、2・3日でもいいからがんばってみよう」と心に決め、翌日からスーパーに出勤し始めました。ピアノのことを思い出したからでしょうか、「レジ」ではなく、ピアノを弾くような気持ちでレジを打ったらどうだろう、キーボードの位置だけしっかり覚えれば打つも弾くもそんなに変わらない、自分流のレジ打ちをすればいいんじゃないか!と思っている自分がいました。
レジ打ちを彼女流に極めてみることにしたのです。

レジから顔をあげて打てるようになると様々なお客様の顔が目に入りました。
今まで気にもしていなかったお客様の様子が目に見えるようになったのです。

いつも特売日にやってくるおばあさんが、珍しく立派なタイをかごに入れてレジにやってきました。
彼女は不思議に思って、思わずおばあさんに話しかけたのです。
「今日は何かいいことありましたか?」
「孫が水泳で賞をとったから、お祝い。」
「おめでとうございます。」
そんなことをきっかけに、他のお客様とも短いながらもやりとりをするようになっていきました。

ある特売日、本当に忙しくて彼女は自分の仕事に集中していました。そんな中、店長が店内放送でお客様に呼びかけています。
「本日は込み合いまして誠に申し訳ありません。どうぞあいているレジにお回りください。」
スタッフが増員された…と思いながら必死にレジ打ちをしていると、再度同じ内容のアナウンスがありました。また同じアナウンス…
彼女はおかしいなと思い周りを見てみると、何とお客様は彼女のレジにしか並んでいなかったのです。

店長に向かってあるお客様が
「ここへ買い物だけにきてるんじゃなくて、彼女とおしゃべりもしたいんだよ。だからこのレジじゃないと嫌なんだ。」
「そうそう、特売なんてどのスーパーでもやってるけど、彼女はこのスーパーにしかいないから、このレジに並ばせて」

彼女が泣き崩れたのは言うまでもありません。
「つまらない」「だれがやってもおなじ」仕事と見えても、そこには働く人それぞれの「創造性」が必ずあるはずです。そして、それを受け取る人が必ず存在していることも事実なのです。
だからどんな仕事も素晴らしい!

あなたのクリエイティブが誰かに伝わりますように…。

参考資料
www.forestpub.co.jp/namida/suisen.html
manatakebooks.seesaa.net/article/207091709.html