みんなの願いが叶った、友情の階段

「絆」…東日本大震災以後、復興への希望を込めてこの言葉がボランティア・支援活動に使われてきました。本当に困っている人を支援するため、手に手を取り合って明日を拓いていくにふさわしい言葉です。

とある小学校で、深い友情の「絆」で結ばれた子供たちがいました。

彼女は産まれて間もなく「脳室周囲白質軟化症」という脳性まひの一種にかかり、手足や首に力が入らず歩くことができませんでした。そして小学校へ入学する時、両親は障害を持っていることも考えつつも公立の小学校へ入れることとしました。普通学級と支援学級を往復しながら学校生活をスタートさせたのです。1学年15人ほどの小さな学校の中で、彼女は楽しそうに通っていると思えました。
実際、登校時に車いすが用意されていたり、移動の時に車いすを運んだりなど同級生たちも自然と彼女を助け、一緒にいることが普通になっていたのです。1・2年生が過ぎ、みんなが3年生になる頃、2階に教室が移る事になったため、彼女は授業を支援学級で受けることになり、ほとんどをそこで過ごすことになりました。それでも休み時間など2階から1階に友達が降りてきて楽しそうに遊んでいたのです。

そのころ、彼女が書いた絵がコンクールで入選し、学校の集会で感想をこめた作文を読むことになりました。

同級生、学校の先生、両親…「友達と遊ぶのが楽しいです」という彼女の作文を微笑ましく聞いていたのですが、彼女の作文を読む声が急に途絶えました。

「ひとりだとさびしいです」。
涙ながらに彼女は言いました。

「え?」というのが同級生たちの本音のようでした。むしろ彼女がみんなともっと一緒に遊んだり、活動したりしたいと思っているとは感じていなかったそうです。

当時、彼らの小学校では、学校近くの河原での川遊びがブームでした。学校側も教育の一環として川遊びを取り入れていたのです。もちろん、彼女も河原に一緒に行っていました。しかし、川へは3mほどの崖を、ロープを伝って降りなくてはなりません。彼女は崖の上からみんなを見守っています。休み時間や合同授業の時同様、みんなが自然に彼女の車いすを押していましたし、川からあがってはとれたものを見せていました。

小学校3年生、自分の身体に障害があることはわかっていても、本当はみんなと一緒に授業を受けたい・崖を降りて川で遊びたい、そう思って当然です。しかし、彼女はそれを表に出さず一人で孤独を募らせていたのです。

彼女の本心を知った同級生たちは、彼女の願いを叶えたいと先生も含めて相談をしました。手足に力が入らない彼女をおんぶして崖を降りることは大人でも難しいことでした。先生と同級生たちの姿を見て、校長先生はその想いを何とか実現させてあげたいと思いながら河原を歩いていると、崖のはしに川に降りられるような階段をつくれないか思いつきました。早速地域の土木振興局へ相談に行き、現状と生徒たちの想いを伝えることにしました。

同級生たちも自分たちができることを…と、ひとりひとり階段を設置してほしい理由と希望を書いた手紙を校長先生に託しました。

「彼女は我慢していますが、私たちも一緒に川に入りたいです」
「彼女は一度も川に入った事がありません。残り3年間で一回でもいいので入りたいです」

市との予算の兼ね合いもありますが、前向きに検討してもらえる返事をもらい、実際土木局の担当の人が川や崖の調査に入りました。
みんなもうすぐ階段ができると、そのために彼女のために何かできないか…夏休みを使ってある物を集め始めました。先生の許しをもらい、2学期の総合学習の時間を使い完成させました。約150個のペットボトルで作られた「どんどん行け ゆうきゴー」と名付けられた筏(いかだ)です。彼女がゆったり乗れるように背もたれ・肘かけがついているので、運動会の時なども活躍したのです。

しかし…10か月経っても、年度が変わっても工事は始まりません。工事担当の課長が異動になっていたのです。
みんなは5年生になっていました。手紙を書いて約2年、みんなの夢を託した「ゆうきゴー」はその出番を待ち続けています。

ある日、県から学校へ工事の着工をすると連絡が入りました。みんなはやっと筏をもって川へ行けると喜びました。
白紙となっていた工事が着工できることになったのは、子供たちからの夢を託した手紙でした。偶然後任の課長が発見し、予算の確保をして実現にこぎつけたのです。

いよいよ工事が始まりました。工事担当者は、川・河原・崖は自然そのままで、階段をつくる以前に道路もつくらないと通ることができないことに気づきました。ただ、そうすればこの工事は赤字になります。素直にやり直せば工事は一旦中断してしまいます。彼女たちの6年生の夏は間もなくやってくるのです。工事担当者は赤字覚悟で、自分も自分の子供たちもお世話になった小学校へ恩返しをすることを決意しました。

そして、いよいよ待ち焦がれた階段が完成しました。
「川へ入るのは初めてです。ワクワクします。」
そう挨拶をしてみんなで筏を持って川に入りました。
「川の水がこんなに冷たいとは知らなかった!」
彼女だけでなく同級生の願いが叶った瞬間です。

あの時、彼女が自分の気持ちを伝えてなかったらどうだったでしょう。
同級生たちは、彼女がいなかったらわからなかったことがたくさんあって、やってみないとわからない、みんなで感動することができた…と言っています。

「自分自身と友達の一生の宝物です」
彼女は笑顔でそう振り返る先には、友達をもつことの大切さを共に感じた仲間がいます。
そこには確かな「絆」があります。

参考資料
www.youtube.com/watch?v=CovmiUCL8Fs